高校生のための脳科学
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日 時: 2003年4月26日(土曜日)13時〜17時
会 場: 北海道大学医学研究科 臨床大講堂
主 催: 本間研一(北海道大学医学研究科・統合生理学)
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磁場でみる脳のはたらきー超伝導と脳科学 栗城眞也 北海道大学電子科学研究所量子計測
超伝導では電気抵抗がゼロになり、特性が磁場によって敏感に変化するなど特異な現象がみられます。SQUIDとよばれる装置は、超伝導になった電子が波の性質をもつことを利用しています。超伝導状態の電子波に磁場が加わると位相が変化し、二つの波が干渉しあったりします。この干渉効果を使うと、地球磁場の100億分の1の微弱な磁場が検出できます。
 SQUIDを使うと脳神経か電気的な活動するときに生じる「脳磁場」が頭部の外から検出できます。私たちが音楽を聴いたり、身体をうごかすなど、ほとんどすべての活動は脳の神経細胞に流れる電流によって制御されています。SQUIDは、その磁場を検出して脳の活動を1ミリ秒の分解能で画像化します。脳科学の世界では、ボランティアを対象としてSQUIDで神経のはたらきを時間・空間的に観察するイメージング研究がさかんです。私たちが行っている。音楽や言語に関係した脳のはたらきを紹介したいと思います。
 
ストレスの脳科学 吉岡充弘 北海道大学医学研究科情報薬理学
「ストレス社会」とまでよばれる現代社会は、「心の病気」に悩む人々を増やし続けています。ストレスとは、外部からの様々なストレッサーと言われる、心理的、感情的、環境的、物理的な物による負荷や刺激により引き起こされます。たとえば、今あなたは面接試験を受けているとします。どんなことが質問されるのか、うまく答えられるか、などと心配しています。心臓もドキドキ、喉もカラカラ、手には汗をかき、冷たくなっています。これは自律神経のうち交感神経が活発となることで外部からのストレッサーに対処しようとするのです。最も活発に活動させなければならない「脳」に血液を集中させるために、末梢血管は収縮します。つまり手足は冷たくなります。心臓はドキドキする事で、脳に酸素や糖を、たくさん送り込もうとします。しかし、これが長く続と、当然体は消耗し、早く動かしていた心臓に過剰な負担をかけ、脳は興奮しているため、不眠症となったり、様々な不都合な状態が体に引き起こされます。
 この交感神経によるドキドキ状態が、リラックスしている時に起こったり、いつもはなんでもない、ちょっとしたストレスに過剰に反応する体の「錯覚」がストレスの問題点なのです。さて、脳の中ではストレスはどの様に処理されているのでしょう。
 
中枢神経疾患に対する治療の現況と未来の展望 岩崎喜信 北海道大学医学研究科脳神経外科学
神経系は大きく中枢神経系と末梢神経系に分かれます。中枢神経系にはいわゆる脳と脊椎骨(背骨)の中に存在する脊髄とがあります。末梢神経系にはそれらの中枢神経系から出て全身に分布する神経が属します。つまり、中枢神経と末梢神経は木で云えば幹と枝の関係にあたり、中枢神経からの命令を末梢神経を通して筋肉や皮膚などに伝える一方、筋肉や皮膚から入ってくる外的情報も末梢神経を通して中枢神経に伝えます。
一般に中枢神経系は一度、壊れたら再生することはないと云われてきましたが、最近、ある条件下では再生する可能性がわかってきました。今回はこれらの神経系につきお話しすると同時に、現在行われている脳神経外科領域における最新の治療の現況と未来の中枢神経系の再生についての可能性も言及しようと思います。
 
質問コーナー:脳ってなに?何でも聞いてみよう 渡辺雅彦(北海道大学医学研究科・機能形態学)