科学的発見とは何か−「泥沼」から突然「見晴らし台」へ 科学的発見とは何か−「泥沼」から突然「見晴らし台」へ 大学共同利用機関法人自然科学研究機構 朝日新聞社 NHK 総合研究大学院大学

大隅良典先生の講演に関する質問

Q1: 過度なダイエット、糖尿病もオートファジーを引き起こすのか。
Q2: オートファジーとアポトーシスの関係とちがいについて、新たな研究の可能性があれば、簡単に解説いただけると理解が深まるように思う。
Q3: 人がやらないことをやろうという精神、大変すばらしいと思うのですが、自信のない若い時代には、人がやらないことはリスクが高く論文が書けないのではないかとの不安にとりつかれます。先生はその不安をどう克服されたのですか?
Q4: 学生のとき、生体膜のDSCをやっていました。ATGの御研究とのインタラクションは何かありますか?(plasma membrane相転移等)。当時、大阪大学の砂本順三先生のフィールドの研究室に所属していました。FISHもやっていました。H+-pumpもやっていました。とてもなつかしい用語も聴けて興味深かったです。ありがとうございました。
Q5: DNAがタンパク質形成に関わっていることは教科書に書かれております。それでは、細胞内の膜構造形成のメカニズムについてもDNAがどのように関わっているのか解明されているのでしょうか?
Q6: 人間(生物)の細胞では、きが状態になくても、なぜアポトーシスが起きるのですか?⇔酵母では、きが状態にして実験
Q7: 思うような成果が上がらない時期に、どういったことが心の支えになりましたか。

Q1:
過度なダイエット、糖尿病もオートファジーを引き起こすのか。

A1:
過度のダイエットは当然オートファジー誘導すると思われます。糖尿病の病態とオートファジーの関係は直接的ではないと思われますが、その過程で誘導されると思われます。

Q2:
オートファジーとアポトーシスの関係とちがいについて、新たな研究の可能性があれば、簡単に解説いただけると理解が深まるように思う。

A2:
アポトーシスは細胞レベルでの生命体がもつ細胞の品質管理機構で,要らない細胞や危険な細胞を除去する機構だと考えるといいと思います、一方オートファジーは細胞内の不要なタンパク質の除去機構で本来的には細胞の生存のための機構だと思います。

Q3:
人がやらないことをやろうという精神、大変すばらしいと思うのですが、自信のない若い時代には、人がやらないことはリスクが高く論文が書けないのではないかとの不安にとりつかれます。先生はその不安をどう克服されたのですか?

A3:
生命科学の発見はいずれどんな過程をたどるかはわかりませんが、誰かが遅かれ早かれ発見するものだと思います。一瞬の論文の発表の早さを競っても楽しいものではありません。素晴らしい研究は何らかの点で,これまで人が何らかの理由でやらなかったことをした結果です。今の時代誰かが見てくれていると思うことが大切ではないかと思います。

Q4:
学生のとき、生体膜のDSCをやっていました。ATGの御研究とのインタラクションは何かありますか?(plasma membrane相転移等)。当時、大阪大学の砂本順三先生のフィールドの研究室に所属していました。FISHもやっていました。H+-pumpもやっていました。とてもなつかしい用語も聴けて興味深かったです。ありがとうございました。

A4:
オートファジーの最も興味深いことは、膜が、外界のシグナルに基づき新たに細胞質中に形成されると言う現象にあります。膜は膜からしか出来ないと言うこれまでの研究者も通念を変えることになるかも知れないと思っています。その点で膜の細胞内動態の理解と極めて密接に関連していると思います。

Q5:
DNAがタンパク質形成に関わっていることは教科書に書かれております。それでは、細胞内の膜構造形成のメカニズムについてもDNAがどのように関わっているのか解明されているのでしょうか?

A5:
全てのことが DNAに書き込まれている訳ではありません。初期発生は、卵の持つ様々なオルガネラとして膜構造を持っており、その初期条件のもとで、核内のDNAから膜タンパク質を含めて新たに合成され,膜構造も合成され,細胞分裂にともない分配されていきます。それは自立的な機構だと考えていいと思います

Q6:
人間(生物)の細胞では、きが状態になくても、なぜアポトーシスが起きるのですか?⇔酵母では、きが状態にして実験

A6:
アポトーシスは高等生物がもつ細胞の質的な制御機構だと考えるのがいいのではないかと思います。不要になったり、危険になった細胞はアポトーシスと言う機構で除去されます。アポトーシスを誘導する条件は細胞ごとに多岐にわたりますが、飢餓もその一つです。オートファジーは一義的には細胞の生存戦略だと思います。

Q7:
思うような成果が上がらない時期に、どういったことが心の支えになりましたか。

A7:
研究をする上で、いつも発見が相次ぐものではありません。一方小さなことで工夫したり、発見できたりすることに喜びが持てることが大切だと思います。