ニューロコンピュータへの展望
三菱電機半導体基礎研究所 久間 和生

 21世紀は脳の世紀といわれていますが、10年ほど前からブームになっているニューロコンピュータは、単なるブームではなく、産業界でもある程度、利用価値がでてきています。そこで本講演では、さらに飛躍するためにどのような方向にハードウエアをもっていけばよいかという点を紹介することにします。

ニューロチップの現状

 少し工学的になりすぎるかもしれませんが、ニューラルネットワークを研究・開発するにあたって、私どもは次のように考えています(図一)。実用化していくためには、ニューラルネットワークのソフトウエア技術、すなわち理論モデルをつくる必要があります。と同時に、シリコンや光を使ったハードウエア技術を開発し、それらを組み合わせて実世界で利用するための応用技術を開発することが重要です。もちろん、より基盤的な部分では生物から学ぶ知見が必要で、それらの分野とのコミュニケーションもしっかりもつとともに、どういう情報処理に使っていくかというマーケッテイングも遂行していこうと常日頃心がけています。
 まず、現在どのようなことが実現できているを紹介します。
 ディジタルニューロチップの構成を図二に示しますが、それは基本的には並列プロセッサに相当しています。図において灰色の部分の一つ一つがマイクロプロセッサのようなもので、下に6個、上に6個、全部で12個あります。それぞれのプロセッサはリングバスで結ばれていて互いに情報伝達を行っています。また、制御ユニットはプロセッサを全体として制御する回路であり、非線形変換ユニットと呼ばれる部分は、いわゆる神経細胞の非線形処理を行う部分です。
 実際にこれをニューラルネットワークとして使うときには次のようにします。プロセッサのなかには加算器や乗算器、メモリーがあり、加算器と乗算器はシナプスにおける積和演算を逐次的に計算します。それに必要な情報はローカルメモリーにはいっています。