試行錯誤から学ぶロボットと脳
科学技術振興事業団 銅谷 賢治
中島さんから人工知能が脳にどこまで迫れるかという話がありました。私は、脳が私たちの行動をどのように制御しているのかを明らかにしていくうえで、ロボット制御や人工知能の流れをくんだ研究が非常に有効な手がかりを与えてくれるのではないか、という希望的観測に満ちた話をしたいと思います。
最初に、ロボットの学習プログラムなどに使われている「強化学習」の理論について基本的な原理を説明します。次に、強化学習のアルゴリズムと脳の情報処理、特に大脳基底核の機能との間に関係があることを示唆する実験データと、それに基づく理論モデルを紹介します。最後に、行動学習システムの性質を調節するパラメータという視点から、個体の性格や情動など、これまで数学や計算機では理解不可能と思われてきた脳の機能に迫る方向がみえてくるのではないかという話をしたいと思います。
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