摂食障害・病態と治療
東京大学医学部附属病院分院心療内科 久保木富房

摂食障害の割合

 マスコミでは、拒食症とか過食症という言葉が使われていますが、まとめて摂食障害と呼んでいます。この摂食障害が最近、非常に増加しています。
 1976年にイギリスのクリスプという有名な学者である治療者が、ロンドンで12〜19歳までの女性を調べ、100人に1人、拒食症がいることを報告して驚かされました。1988年には、アメリカのガーフィンクルが、アメリカの12〜19歳の女の子でも100人に1人の拒食症、100人に3人の過食症、合計すると100人に4人、つまり25人に1人が摂食障害であるという驚くべき数字を報告しています。
 私どもは厚生省の研究班で15年以上前から調べていますが、日本では今のところ摂食障害は3500人に1人ほどと桁が違っています。ただし、自分で疫学調査を行ってこんなことをいうのはおかしいのですが、調べ方があまりよくないため、実際はもう少し多く、臨床的なデータを加味すると1000人に1人ほどいると推定されますが、それでも桁が違います。ただし、最近、日本でも少しずつふえているという報告がみられます。
 この摂食障害は、思春期の女性にほぼかぎられています。興味深いことに都会に多い病気で、文化や経済などに影響されているようです。世界的にはアメリカ、イギリスに多く、中国、ソ連、アフリカには少ないなど地域によって違います。その点がおもしろい病気だと感じてもう25年研究しています。