脳の専門家を前にして、脳について語る資格があるかどうか心もとないことです。私がこれまで勉強してきたのは科学や技術の歴史が主なので、二一世紀の脳科学に期待するためには過去がどうであったかをお話して、二一世紀へどのようにつないでいくか、私なりに考えていることを述べてみたいと思います。 二一世紀は間もなくです。伊藤正男先生のリーダーシップのもと、日本で総合的な脳科学研究が発足したのは比較的最近ですが、脳あるいは脳\神経系への関心は伝統的にありました。ここでの私の話は筋道が五つほどにわかれます。まず、脳\神経系の概念について触れ、次にデカルトの理論を、三番目に行動主義的人間理解について、四番目にAIの分裂について、そして最後に総合的科学としての脳科学への期待を述べることにします