シリコンチップに脳機能を蓄積する
四端子デバイスが切り拓く連想知能エレクトロニクスの世界

東北大学大学院工学研究科    大見 忠弘

はじめに

 脳研究の一環として、現在のコンピュータがもっている欠点を克服する道を探る研究を進めています。従来のノイマン型コンピュータは、ありうべき答えをすべて同じ重みで計算して比較し、答えをだすというきわめて厳密かつ冗長な方式を採用しています。計算の素過程がいくら速くても、対象となる場合の数が多すぎるため答えをだすのに天文学的時間がかかります。そのような方式では、人間が人間の言葉で話しかけたときにただちに答えてくれるようなコンピュータを実現することは不可能です。そのことを、どう克服するかが問題です。かつて、日本では第五世代コンピュータの開発プロジェクトが組織され研究が進められましたが、残念ながら大きな成果は得られませんでした。私どもの解釈では、現状のハードウエアを前提にしてソフトウエアだけで課題を克服しようという攻め方に無理があったのではないかと考えています。私どもが目標とする機能を実現するためには、システム、アルゴリズム、アーキテクチャの高機能化だけではなく、システム性能を高めるために、回路やデバイス、場合によってはプロセス・材料までも新しい概念、新しい方法をとる必要があるのではないかと考えて、「四端子デバイスが切り拓く連想知能エレクトロニクスの世界」という副題をつけました。