宇宙究極の謎− 暗黒物質、暗黒エネルギー、暗黒時代 −

家正則先生の講演に関する質問


Q1:
望遠鏡のより一層のレベルアップの為、米国、カナダとの協力をお考えのようですが、望遠鏡の種類が違うのかもしれませんが、アタカマに建設中の電波望遠鏡との協調で現状のレベルアップははかれないのでしょうか。

A1:
電波望遠鏡と光赤外線望遠鏡では、見える天体が違います。光や赤外線は比較的温度の高い天体から発せられるのに対し、電波は冷たいガスから発せられるためです。波長が1000倍ほど違いますので、例えば光赤外線望遠鏡の鏡の精度は電波望遠鏡のアンテナより1000倍高いものが必要となりますので、電波望遠鏡のレベルアップでは光赤外線の観測はできないのです。

Q2:
観測技術の向上が天体発見と宇宙研究の進歩に貢献している件、理解できました。ありがとうございます。観測機器の大型化とともに、望遠鏡の宇宙軌道配置も進んでいます。地上望遠鏡と宇宙天文台とのすみ分けはどのようにお考えですか?

A2:
地球の大気に妨げられて地上には届かないX線や一部の赤外線などの観測は宇宙望遠鏡でしかできません。地上からも観測できる可視光や赤外線、電波の観測でも宇宙望遠鏡での観測のほうが、本来は良い観測ができます。しかし、宇宙望遠鏡は地上望遠鏡に比べて桁違いに高額な予算を必要としますので、大きな望遠鏡をつくるには地上での建設が現実的です。補償光学が実現するようになって、地上の大型望遠鏡のほうが宇宙望遠鏡より解像力も凌ぐようになってきました。すばる望遠鏡など大型の地上望遠鏡は集光力がハッブル宇宙望遠鏡より大きいので、光をスペクトル分解して詳しい分析をすることで、宇宙望遠鏡の機能を補っています。

Q3:
ライマンα線で宇宙の端の星の光をとらえる●、これを観測するためにはある程度の光の強度が必要と思いますが、どれ位の恒星であれば観測可能なのでしょうか。

A3:
すばる望遠鏡で捕らえられるライマンα輝線銀河の限界は25等級です。5等級で100倍ですから、シリウスなどの一番明るい星に比べるとわずか100億分の一の明るさしかないということになります。