宇宙究極の謎− 暗黒物質、暗黒エネルギー、暗黒時代 −

児玉忠恭先生の講演に関する質問


Q1:
よく宇宙論で指摘されるのが、現在の宇宙の姿になる理由に条件が変わると(重力定数などの物理的定数)、宇宙は今のようにはならないという点ですが、こうした物理定数を変えたときのシミュレーションは試していらっしゃいますか?または、試す予定はありますか。

A1:
宇宙論的パラメター(ハッブル定数、物質密度、暗黒エネルギー密度)はWMAP衛星による宇宙背景放射や可視での超新星の観測などによって精度よく決まりました(10%以内の精度)。その結果、宇宙の構造形成の様子を大きく変えるようなパラメターを設定する必要がなくなりました。

Q2:
宇宙の始まりを考えると構造がない状態(場所によって異なるものがない)から構造が出来る段階がある。しからば構造ができるための条件があるはず。それが何であるかを知りたい。ヒントでもよいので教えて下さい。生物の発生、生物の群の発生にも通じると思います。

A2:
構造ができる条件は、宇宙の初期密度揺らぎで周りより少し密度が超過していることです。そうするとその部分の重力が強くなるため周りから物を引きつけ、さらに密度が高くなって構造が成長します。

Q3:
(1)大規模構造の生因は宇宙初期の密度(?)ゆらぎと密度(物質)間の重力だけですか。それで何故網目のようになるのか。点状が出来るか不思議に思うのですが。そもそも初期のゆらぎの原因は何ですか。
(2)構造にはハチの巣状やY(120°)状等の対称性をもつ形がある様に思えたのですが、形状の程●は認められていますか。あるいは無秩序ですか。

A3:
初期密度揺らぎの起源は難しい問題で実は今でもよくわかっていないですが、最も有力な説では、初期宇宙のインフレーションを引き起こしたとされる場の真空エネルギーに量子的な空間揺らぎがあって、それがひいては密度の揺らぎとなったと考えられています。その結果、小さな揺らぎほど振幅が大きく、小さな天体が先に成長します。それらが重力的に集まってより大きな構造が出来上がってくるというのが通説です。網目になるのは、非球対称な密度揺らぎがあると、つぶれた方向に重力が強くなるので、その方向によりつぶれるため、非対称性が成長します。従って球状より面状、面状より線状な構造が発展するのです。