開催趣旨

 2000年のシロイヌナズナの全ゲノム配列が解読成功は、作物や植物の研究の方向を大きく変容させました。その成果はそれまでの個別遺伝子の機能解析研究では到達できなかった新しい生物学の概念と科学技術を我々に提供しています。ゲノム未解読の作物や野生植物、樹木の機能遺伝子研究、イネ全ゲノム解読、ゲノム育種、作物における種内交配の壁を越えた有用遺伝子の利用や不要遺伝子機能の抑制など、これまでの品種改良技術では到達不可能であった植物の潜在能力の発掘に成功しつつあります。植物の機能改良研究はいまや実験モデル草本植物に限られたものではなく、パルプ、ゴムやバイオ燃料などの原料樹木植物にも及んでいます。このようなゲノムベースの研究の進展の中で、2006年のポプラゲノムの全塩基配列決定は、多年性樹木のゲノムという点で、シロイヌナズナでは判らなかった多くの知見を提供し、今後の樹木バイオテクノロジーへの貢献が期待されます。
 このような樹木植物科学研究発展への期待が高まる中、日産科学振興財団では環境研究を広く助成してきました。とくに樹木による太陽エネルギー有効利用と環境CO2低減に資する研究分野を重要視しています。その一環として、奈良先端科学技術大学院大学横田研究室では「植物環境応答機能を利用した樹木炭酸ガス吸収能拡大」研究を実施しています。
 このシンポジウムはこのプロジェクト研究の一環として開催し、樹木植物のゲノム研究、バイオテクノロジー、生理生態学の世界の英知をお招きし、樹木植物研究の現状と将来の方向について議論します。また、日産科学振興財団がこれまで支援してきました国内の若手研究者による光合成に関わる研究成果をポスター発表して頂きます。これまで当財団が支援してきました植物による光利用の機構に関する研究成果を俯瞰することによって新たな研究の方向への相互連携を期待します。

シンポジウム組織委員会
委員長:横田 明穂
委員:明石 欣也
蘆田 弘樹
宗景 ゆり
財団事務局