開催趣旨 - Purpose

国際高等研究所(以下、「高等研」と略す)は、将来の学術研究の発展のために、様々な分野の研究者の交流を通して、学術の芽を発掘し育成することを、大きな目標としている。すなわち高等研は、シンクタンクとして、学術の将来の在り方や問題等に関して、様々な提言を行うことを大きな使命としているのである。勿論、その中には、現在、最も大きく展開している学術の分野ないし課題について、国際的な視野に立って、最先端をいく研究者を集めて議論を深め、その過程を踏まえて、今後、さらに展開されると予想される問題点や方向性を明らかにすることも、重要な事業の一つとして含まれている。

今回のカンファレンスの主題は、最近の脳神経科学の急速な進展、取り分け感覚受容をめぐるニューラルネットワークに関する分子生物学的研究の目覚ましい展開を踏まえて、取り上げられたものである。その伏線としては、昨年度から高等研で開始された研究プロジェクト「意識は分子生物学でどこまで理解できるか?」があるのは確かである。このプロジェクトは、元来、人文科学の問題であった人間の「意識」を、分子生物学的手法でどこまで解明できるかを主題にしているが、意識に限らず高次脳神経機能の機構解明に、分子生物学的手法がどこまで有効であるかという問題は、今後の学術研究の上に重要な問題を提起することは明らかである。

高等研カンファレンスは、アメリカで様々な課題について従前から行われているゴードンカンファレンスの形式を参考にして、主として未発表のデータを用い、議論を主体とする会議にする予定である。従って我が国でこれまで慣例的に行われてきている、いわゆる国際会議とは異質なものであり、そこでは最新、且つ最先端の知見が発表され、活発な議論が展開されることが期待されている。

なお、高等研カンファレンスは、原則的には異なる題目で毎年開催されることになっている。

財団法人国際高等研究所