「飛鳥むかしむかし」の開催にあたって
文化財研究の魅力や面白さ、奈文研の日頃の活動や調査研究成果を、皆さまに広くお伝えしようと2010年から始めた奈文研の東京講演会も、今回で8回目を迎えました。
今回は先日出版されました『飛鳥むかしむかし』(朝日選書949・950)の発刊を記念して、同名の講演会を開催することにしました。
『飛鳥むかしむかし』は、飛鳥・藤原を舞台に繰り広げられた古代国家誕生の歴史を、考古学、古代史学、万葉学、国語学、美術史学の研究者が多角的に解説した朝日新聞の連載記事で、2013年4月から2016年3月までの3年間、毎週金曜日の朝刊(奈良版)に116回にわたって掲載されました。連載には毎回、早川和子さんの個性的なイラストが添えられ、文章では表現しきれない古代飛鳥の生き生きとしたイメージが広がりました。
連載終了後に『飛鳥むかしむかし』「飛鳥誕生編」と「国づくり編」の2分冊として書籍化されましたが、出版直後の反響も大きく、読者の皆様からも好評を博しています。
そこで今回の講演会では、連載では十分に紹介しきれなかった飛鳥・藤原研究の最前線について、奈文研の6名の研究員がテーマを絞って紹介することにしました。少し盛りだくさんの内容の講演会となりますが、飛鳥・藤原から平城へと遷り変わる古代衣装のファッションショーも企画しています。また、挿絵を担当してもらった早川和子さんには、作画の楽しみや苦労話などの紹介をお願いしました。
本年は奈文研が飛鳥の発掘調査に着手してから60年の節目の年に当たります。飛鳥における最初の発掘調査は、わが国最初の本格的寺院である「飛鳥寺」の調査で、本年5月に亡くなられた坪井清足元所長(享年94歳)が主導した学史に残る調査でした。
その後の60年で、飛鳥・藤原地域における古代国家誕生の歴史の解明は一体どのように進展したのか、本日の講演会を通して、古代史研究の魅力を堪能していただければ幸いです。
独立行政法人国立文化財機構 奈良文化財研究所
所長 松村 恵司