最先端研究開発支援プログラム
「低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発」中心研究者
東京大学先端科学技術研究センター附属
産学連携新エネルギー研究施設長・教授
瀬川 浩司
2009年に開始された内閣府最先端研究開発支援プログラム「低炭素社会に資する有機系太陽電池の開発」は、2014年に終了を迎える。この間、わが国は東日本大震災を経験し、エネルギーをめぐる状況は一変したと言っても過言ではない。逼迫する電力事情の中で、再生可能エネルギー、とりわけ太陽光発電に対する期待は従来より一層高まっている。本プロジェクトは、次世代低コスト太陽電池の本命である有機系太陽電池の早期実用化に向けて、産官学のオールジャパン体制で研究開発を進めるもので、この分野で日本が世界をリードする状況を作り出すことを目指してきた。
有機系太陽電池は、シリコン系太陽電池に比べ製造時の炭酸ガス排出量が少なく原材料の資源的制約も少ないうえ、大面積化や印刷製造が可能で低価格化できる。また、カラフルでフレキシブルにもなることから、新規用途の開拓で市場拡大も見込まれ、再生可能エネルギーの利用拡大に大きく貢献することが期待される。その製造には、日本が得意とするナノ材料技術、有機材料技術、印刷技術等を駆使することができ、新規企業の参入も見込まれる。色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、有機無機ハイブリッド太陽電池、蓄電機能を内蔵した太陽電池など、さまざまな次世代太陽電池の実用化が期待できる。
なかでも、本プロジェクトの成果として出てきた広帯域光電変換材料や、有機無機ハイブリッドペロブスカイトは、世界の研究開発を塗り替えようとしている。色素増感太陽電池と有機薄膜太陽電池の基本的原理には共通する部分があり、さらにそれらの長所を組み合わせた有機無機ハイブリッド太陽電池には大きな可能性が秘められている。こうした技術を発展させ革新的次世代型太陽電池を生み出すことは、国際戦略上も極めて重要である。本国際シンポジウムでは、内外の第一線研究者をお招きし、これまで分散していた研究開発資源を結集しオールジャパン体制で進めてきたわれわれの研究成果の一端をご紹介するものである。是非多くの方々にご来聴いただきたい。