会長挨拶

第28回日本がん検診・診断学会総会

西井研治

会長 西井 研治
岡山県健康づくり財団付属病院 院長

第28回日本がん検診・診断学会総会会長を拝命致しました岡山県健康づくり財団附属病院の西井と申します。本学会は多数の臓器のがん検診・診断について、その有用性や今後の課題について、専門性の違う各分野の専門家が集まって議論し、いろいろな提言を行ってきました。第28回総会は2020年岡山市において開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症蔓延のためやむなく中止となりました。会員の皆さんにご協力をいただき企画を準備していたため、第29回会長の笹川寿之先生のご厚意で、一部の企画を第28回総会と共同開催という形で実施させていただけることになり、森山光彦理事長ならびに笹川寿之先生に感謝いたします。私自身は呼吸器内科医であり、30年にわたって肺がん検診にかかわってきました。肺がん検診の分野では70mm、100mm間接フィルムからデジタルレントゲン、そして低線量CTと撮影機材の進歩により、より早期の肺がん発見が増えていることを実感しています。わが国では2人に1人が「がん」になる時代だと言われ、あらゆる領域でがんの早期発見方法や低侵襲の治療法の開発が求められています。そのような社会の要求を踏まえて、がん検診においても、ゲノム診断をはじめとする新しい検診技術が次々に生まれています。治療においても今や患者の遺伝情報を調べて(companion診断)、それに最適な治療法を選択する「Precision Medicine」が常識となりつつあります。ゲノムの知識は検診従事者にとっても今後ますます必要なものとなることが予想されます。

一方、がん検診の精度管理の問題についても本学会で数多く取り上げられてきました。高齢者のがん検診をどうするのか。過剰診断や見落としの問題など議論が必要なテーマが多く残っています。また今後増えていく個別検診の精度管理についても、実地医科の先生を巻き込んで議論を深めていく必要があると思います。このような観点の企画をシンポジウム、ワークショップ等の形で提供するとともに、がん検診の問題点の整理とコンセンサスづくりに貢献したいと思います。


第29回日本がん検診・診断学会総会
第30回日本婦人科がん検診学会総会・学術講演会

笹川寿之

会長 笹川 寿之
金沢医科大学・産科婦人科 教授

第29回日本がん検診・診断学会/第30回日本婦人科がん検診学会総会・学術講演会の会長を拝命致しました笹川寿之です。本総会は、多領域のがん検診・診断について、その有用性や今後の課題について、専門性の違う各分野の専門家が集まって議論し、さまざまな提言を行うことが目的です。今回は、2021年9月11 〜 12日の2日間開催することになりました。私は産婦人科医として、30年以上ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸癌に関する基礎および臨床的研究とそれを応用した臨床を実践してまいりました。また、日本臨床細胞学会の専門医として、子宮頸がん検診における細胞診断にも長年かかわってきました。ご存知のように、Papanicolaou博士が開発した子宮頸部擦過細胞診による検診によって、子宮頸癌の発生率・死亡率は著しく減少しました。ところが、女性の社会進出が進むにつれて女性の意識や生活環境が大きく変わってまいりました。性経験の若年齢化や晩婚化という現象が一般化し、女性の飲酒や喫煙の機会も増えてきました。その結果、1980年代後半まで減少していた子宮頸癌が1990年以降徐々に増加しています。特に日本では若年齢の子宮頸癌患者の増加は著しく、20 〜 30歳代の女性は200人以上、40歳代を含めると500人以上が毎年亡くなっています。さらに毎年1万人以上が子宮を失っています。

子宮頸癌の原因はHPV感染です。性交経験したほとんどの女性が感染し、その多くは免疫で排除されるものの、一部の女性では持続感染化して10年以内に前癌状態、さらに10年以上を経て浸潤癌になります。発癌過程では喫煙などがリスク因子として作用します。そこで、HPV感染予防ワクチンで高リスクHPV感染を未然に防ぎ、子宮頸がん検診におけるHPV遺伝子検査導入によって前癌状態で発見する2段階システムによってがんを撲滅するというパラダイムシフト的変革が世界中で起こっています。ところが日本においては、HPVワクチンは中断状態、子宮頸がん検診におけるHPV遺伝子検査の導入も進まず、将来、危機的状況になると危惧されています。今回の日本婦人科がん検診学会では、このような状況を打破するための方策についておおいに議論したいと思っています。また、日本がん検診・診断学会では外科、婦人科、泌尿器科、耳鼻科などの各領域において、将来、がん検診を変えるであろう遺伝子診断を含めた新技術を紹介し、それらのメリットは何か、どのようにすれば導入できるか、費用対効果はあるか、などについて討議していただきたいと考えております。