代謝マップ、セントラルドグマの樹立等、第1世代のライフサイエンス、次いで、様々なシグナル伝達機構の解明、ヒトゲノム計画等の第2世代のライフサイエンス、様々なレベルのイメージングの開発、システム生物学、合成生物学等の第3世代のライフサイエンスが進められています。これらすべての世代のライフサイエンスを引き継ぎ、新しい時代を切り開く第4世代のライフサイエンスに向けて世界は動いています。本シンポジウムは、このような歴史を鳥瞰し、現潮流からどのような新しい方向性のライフサイエンスを推進していくか、とくに、様々な生命機能や疾患原因・要因にフォーカスした「分子ネットワーク制御」という観点で討論を行い、時空間多点分子制御に基づく研究技術基盤や創薬基盤の構築を目指していくものです。
ヒトゲノム計画終了後、その情報をもとに、米国主導で遺伝子や機能の発現に必要な領域を探る「ENCODE」や、がんに関してゲノムのどこがどう変わるのかを探る「がんゲノムアトラス」等の国際的な大規模プロジェクトにより、遺伝子の制御領域を含んだ複数の遺伝子変異による分子ネットワーク変調が"がん"の要因として有力視されています。
また、遺伝子変異と疾患の関係に対する本質的な理解が急速に進み、遺伝子発現領域を含んだ分子ネットワーク制御という新知見に沿った、新しい標的に対する創薬が注目され、世界的な技術開発競争が始まっており、これまでの技術では対応できない新たな課題を解決する技術開発に取り組む必要性が高まってきています。
そのため理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターでは新たに、1細胞レベルで、個々の細胞で遺伝子発現を制御する情報伝達の仕組み(分子ネットワーク)を理解し、細胞内における分子ネットワークを制御する特異性の高い制御分子の開発に向けた基盤技術を開発することにより、新たな創薬プラットフォームの構築に貢献するとともに、個体レベルでの生命現象の本質的な理解に向けた革新的な技術基盤を提供に向けて準備を進めています。
本シンポジウムでは、このような分子ネットワーク制御技術基盤の構築と今後の展開について討論することを目的に、行政、大学、研究所、企業の関係機関に広く分子ネットワーク制御技術基盤を構築していく方向性についてご理解いただくことを目的としています。
本シンポジウムに奮ってご参加いただき、参加者各位の交流を通して、分子ネットワーク制御技術基盤の未来を語る機会にして頂ければ幸甚です。