大会長挨拶
多様な人類学の展開と異分野協創の促進に向けて
今年の日本霊長類学会、日本人類学会、日本生理人類学会(以降、「日本」を省略)は、これら3学会の連合大会として行うことになりました。これら3学会による連合大会は初めてのことです。霊長類学会と人類学会との連合大会は2001年と2022年にいずれも京都で行われました。私は両方とも参加しました。私自身はこれら2つの学会の会員で、普段なら人類学会で発表する内容を霊長類学会の会員の皆さんに聞いていただけ、逆に普段なら霊長類学会で発表する内容を人類学会の会員の皆さんに聞いていただけて、普段と異なるフィードバックを得られて新鮮でした。21年ぶりに開催された直近の連合大会の記憶は鮮明で、両学会の会員に大変好評であったという強い印象を持っています。
3学会の概要に少し触れてみます。生理人類学会はヒト(Homo sapiens)を、人類学会はヒト亜族(Hominina)[ヒトとチンパンジーの共通祖先からヒト側に連なる、化石種を含む系統群(いわゆる「人類」)]を、霊長類学会はヒト亜族以外の霊長類を主な研究対象としています。生理人類学会はヒトの生理特性の理解・人間生活の質の向上、人類学会は人類の特質・多様性・進化の理解、霊長類学会はヒト亜族以外の霊長類に関する広範な理解・保全福祉の向上について、研究と教育の推進・普及を主な活動内容としています。学会の始まりは人類学会が最も古く1884年、生理人類学会が1978年、霊長類学会が最も新しく1985年です。このように、スコープや設立の経緯はそれぞれに独自であり、異なります。一方で、このように対象生物は極めて近縁であり、あるいは重なっており、最も古株の人類学会と設立においても関連があり、それぞれの学会は他のこれらの学会の活動内容と無縁ではありえず、お互いを意識せざるを得ません。大きな視点でみれば、分業的、相補的関係ともいえます。
3学会はそれぞれ会員数1000人を割るいわゆる「小規模」学会に該当します。学会の数が多いことを問題視する意見が学術行政側にあると聞いて久しくなりました。小規模学会は存立の危機感を共有しているともいえます。ただ、上記のようにそれぞれの学会の独自性・専門性を考慮すれば、融合・合併による「大規模」学会化ではなく、学会連合による組織的な協創・協奏体を目指すのが現実的かつ生産的・発展的と思われます。連合大会はこれに向けた具体的な一歩を捉えることができます。本大会のスローガンである「多様な人類学の展開と異分野協創の促進に向けて」はそのような趣旨から掲げました。
本大会は、初日では、各学会がこれまでそれぞれに行っている学術集会(霊長類学会の自由集会、人類学会の分科会、生理人類学会の研究部会)を各学会が行い、最終日では、公開シンポジウムを、人類学関連学会協議会(日本人類学会、日本生理人類学会、日本文化人類学会、日本民俗学会、日本霊長類学会の5学会によって構成される組織)の今年度当番学会である人類学会が企画しますが、それら以外の一般発表、中高生ポスター発表、学術シンポジウム等はすべて3学会が合同で企画し運営しています。
3学会の連合大会ともなると通常の単独大会より、長い日程と多くの会場の確保が必要となります。大会日程を研究発表にできるだけ充てるため、各学会の会員総会や代議員会は大会とは別日程で行います。東京大学の駒場キャンパスは、9月は秋の学期が始まる前であり多くの教室を確保することができました。また、井の頭線を介して渋谷に近く、渋谷にはJR、私鉄各線が乗り入れ、交通の要衝です。飲食店が豊富なのは言うに及びません。下北沢、吉祥寺なども井の頭線ですぐに行ける近さです。会場外でも議論・親睦が深まることを期待しています。
本大会が実りの多いものとなりますよう。
2026年2月12日
第42回日本霊長類学会・第80回日本人類学会・第88回日本生理人類学会連合大会
大会長 河村 正二