3学会合同シンポジウム

3学会合同シンポジウム

会場東京大学駒場キャンパス 13号館内大教室(詳細は追って掲載)
形式対面

Part 1 9月11日(金)午後(詳細は追って掲載)
『「適応」とは何か:遺伝・進化・生理からみた人類の多様性』

世話人 : 太田 博樹(日本人類学会、東京大学)

日本霊長類学会・日本人類学会・日本生理人類学会は、それぞれが研究対象としてきた時間スケール、時代、生息・生活環境などが異なることが多く、「適応」という語に込める意味も必ずしも同一ではない。日本人類学会と日本霊長類学会は、人類および霊長類の進化過程における環境との関係を重要なテーマの1つとしてきた。これに対し、日本生理人類学会は、高度に技術化された現代社会の生活環境の中で、ヒトが示す生理的反応やその多様性を中心に扱ってきた。そのため、生理人類学における「適応」は、進化的適応というよりも、「順応」あるいは「馴化」に近い意味を帯びることが多い。

一方、進化研究においても、生態学、形態学、遺伝学のアプローチの違いにより、「適応」が指す現象や時間スケールには微妙な差異がありそうだ。たとえば、遺伝学的研究では、生存にとって有利な変異が世代をこえ集団中に急速に広まる現象を「適応」と考える。すなわち「世代をこえる」ことが重要な前提となるが、生態学や形態学では機能的に有利であることを適応的と表現することがある。過去3年にわたり日本人類学会大会で継続的に開催してきたシンポジウム「環境適応とその多様性」での議論では、こうした違いが明らかになる一方で、環境に対する人類の多様な応答を理解しようとする共通の関心も確認されてきた。

本シンポジウムでは、ゲノム進化、二足歩行に関わる形態・運動機能、光環境と概日リズム、霊長類の生態、集団ゲノム、生理機能からみた適応戦略を横断し、環境と人類の関係を多面的に議論する。3学会が集う本大会は、近接しながらも異なる視点をもつ分野が互いの言葉を照らし合わせる貴重な機会である。本シンポジウムでは、「適応」という語の多義性を分断や混乱としてではなく、人類学的研究を広げるための契機として捉える。異分野をつなぐ対話を通じて、人類の多様性を理解するための新たな共通基盤を探りたい。

講演者

颯田 葉子 日本霊長類学会 総合研究大学院大学
『自然選択と「適応」』
荻原 直道 日本人類学会 東京大学
『二足歩行における「適応」』
樋口 重和 日本生理人類学会 九州大学
『ヒトの生理反応からみた「適応」の捉え方』

コメンテーター

香田 啓貴 日本霊長類学会 東京大学
渡部 裕介 日本人類学会 東京大学
安河内 朗 日本生理人類学会 九州大学


Part 2 9月11日(金)午後(詳細は追って掲載)
『プラネタリーヘルス:身体・物質・共生の循環を読み解く』

世話人 : 山内 太郎(日本生理人類学会、北海道大学)

本シンポジウムでは、環境と人類の相互作用を「循環」の観点から問い直す。ヒトと環境のあいだで交わされる物質や共生体の流れ、地球規模から身体内部に至るまで多層的に生じる「見えない現象」を可視化する人類学的アプローチに焦点を当てる。例えば、環境から物質を取り込む「食」と環境へ物質を放出する「排泄」、水・土壌・身体のあいだで生じる物質循環、移動と環境利用、ヒトと多様な生物との共生関係などを取り上げる。対象とする時間軸は現代社会に限定せず、人類進化や人新世も視野に入れて通時的に検討する。ヒトの進化と生物学的多様性を探究する自然人類学、ヒトを霊長類進化の連続性のなかで理解しようとする霊長類学、そして環境への適応を通じて身体と生活の関係を探究する生理人類学という異なる学問的伝統を背景に、それぞれの立場から「循環」という共通テーマを検討する。

霊長類学の立場からは、野生霊長類の食行動や排泄行動に着目し、ヒトを含む霊長類が環境中でどのような物質循環・社会的相互作用を形成しているのかを考える。自然人類学の立場からは、安定同位体分析を用いて骨や歯に記録された物質循環の痕跡を読み解き、人類の食性、移動、水循環や地球化学的景観との関係、 環境適応の歴史を復元する試みを紹介する。生理人類学の立場からは、排泄やサニテーションを循環の重要な構成要素として捉え直し、地域住民との参加型アクションリサーチを通じた環境と健康の共創的実践について議論する。

本セッションは、個別研究の紹介に留まらず、「身体」「物質」「行動」「共生」をキーワードとして、人類と環境の関係を再考することを目的とする。異なる学問領域の知見を交差させることで、地域の実践から地球規模の課題までをつなぐ新たな視座を提示したい。そして、プラネタリーヘルスを単なる環境問題や健康問題としてではなく、人類・霊長類・環境の循環的関係のなかで捉え直すことにより、自然人類学・霊長類学・生理人類学の協働が切り拓く新たな研究の地平を展望する。

講演者

松本 卓也 日本霊長類学会 信州大学
『霊長類における食と排泄の自然誌』
申 亜凡 日本人類学会 東京大学
『安定同位体から見る身体と環境をつなぐ物質循環』
山内 太郎 日本生理人類学会 北海道大学
『サニテーションから紐解くプラネタリーヘルスと共創的実践』

コメンテーター

松田 一希 日本霊長類学会 京都大学
中山 一大 日本人類学会 東京大学
恒次 祐子 日本生理人類学会 東京大学


Part 3 9月12日(土)午後(詳細は追って掲載)
『多様性と「正常」のゆらぎ』

世話人 : 河村 正二(日本霊長類学会、東京大学)

ヒトの身体的・行動的・心理的特徴の多様性は、しばしば「正常(あるいは標準・典型・健常)/異常(あるいは特殊・例外・障碍)」などの言葉で二分法・二元論的に理解されてきた。しかし近年の霊長類学、人類学、進化医学、遺伝学の知見は、ヒトの特徴の多くが明確な境界をもつものではなく、連続的で、多様で、環境との関係の中で意味づけられることを示している。進化の視点(特に霊長類学の視点)からヒトを俯瞰すると、ヒトにおいて正常や標準と考えられてきたことが、むしろ異常や特殊なことであったり、逆にヒトの優れた特性と考えられてきたことが、特別ではなかったりすることがわかってきた。ヒトの種内多様性の二分法・二元論的な区分けには、生物学的根拠の有無や、その理解の正誤によらず、歴史的、社会的、文化的に人為によって形成・固定化されてきたものがある。その気づきを共有することは、人為の方向を変えることで、それに起因する差別、格差、不便、機会喪失などの解消への支援に繋がりうるのではないか。一方で、重度から軽度の様々な疾患・健康障碍や、生活上の大小の困難をもたらす状態は確かに存在し、医療的・社会的支援を必要とする。これらは誰もの身近に起こりうる多様性の一部であるという気づきが、関心、理解、支援を喚起できるのではないだろうか。重要なのは、「正常/異常」という単純な二分法を維持することでも、それを全面的に否定することでもない。むしろ、どのような場面で分類が必要とされ、誰のために、どのような支援や社会設計につなげられるのかを問い直すことである。本シンポジウムでは、人類学関連3学会から提供される話題を元に、「正常/異常」という従来の枠組みを再検討する。そして、ヒトの多様性をより深く科学的に理解するとともに、より生きやすい人類社会のあり方を考える契機としたい。

講演者

山田 一憲 日本霊長類学会 大阪大学
『ヒトはどこまでサルか、サルはどこまでヒトか』
米元 史織 日本人類学会 九州大学
『古人骨研究からみた文化変容・階層の身体化』
江頭 優佳 日本生理人類学会 国立精神・神経医療研究センター
『神経発達症から考える「正常」のゆらぎ』

コメンテーター

太田 英伸 日本生理人類学会 金沢大学
松前 ひろみ 日本人類学会 東海大学
河村 正二 日本霊長類学会 東京大学


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